大判例

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大阪地方裁判所 昭和45年(ワ)1987号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一、訴外山崎の過失について

本件事故現場は交差点で、信号機は設置されているが照明がなくて暗く、訴外山崎は制限速度の範囲内たる毎時五〇キロメートルの速度で事故車を運転中、マンホールの工事で路面から約二五センチメートルその上蓋附近が盛り上つていたのにその前輪を乗り上げたものである。右山崎において、かかる路面の欠陥に事前に気付き、これを避ける等安全運転をなし得る余地は存しなかつたものか否か、つまり、右運転に際し注意を怠らなかつたとの点につき、未だ確たる心証を得るに至らない。被告の自賠法三条による免責の主張は理由がない。<証拠略> 二、原告キャクエの受傷内容

同原告の治療に当つた医師の把握したところおよび治療経過は左のとおりである。

① 巽外科病院

傷病名 頭部外傷型、頸部挫傷。

原因 タクシーが溝にはまつたため天井で頭を打つた(問診)

病状 頸部背屈痛、左側屈痛、左回旋痛、頭重、悪心、嘔気、めまい、耳なり、不眠、左右上肢手指のしびれ感。

所見 レントゲン検査の結果異常なし、その他精密検査行わず。

治療 昭和四三年一〇月中旬〜同年一二月七日入院

右軽快退院後、通院せず。

② 岡野外科

傷病 名頸椎捻挫(むち打症)。

原因 交通事故による追突

病状 頭痛、背痛、四肢の疼痛を訴えるが神経症状と考えられる。時々めまいがして倒れるが、脳神経科の障害は認められず、頸部交感神経刺激症状がある。

所見 頸椎に特記すべき著変はないが精密検査は行つていない。

治療 昭和四四年二月一一日〜同年四月三〇日(七九日間)入院、

昭和四三年一二月一四日〜昭和四五年一二月二五日(六五三日)退院(実日数二一三日)

③ 松田神経科、内科診療所

傷病名 不詳

原因 車がくぼみに落ち、その際車の天井で頭を打つた。

病状 顔面を主とした痛覚の低下、めまい、ふらつき、ブロックアタック(頸をまげたりして起る失神発作)症状。

所見 右症状から、頸椎上部から脳幹部へかけての神経損傷があり、椎骨脳底動脈損傷があるものと推測して、椎骨動脈撮影による検査等整形、脳神経両科における精密検査をしたが、年令(昭和四年生)に比して動脈硬化症がうかがえるほか異状がなかつた。神経症的傾向がある。

治療 昭和四五年二月四日〜昭和四六年七月九日通院(実日数四八日)

④ その他

事故直後、近くの病院へ約一〇日間通院し、昭和四四年中に二回、昭和四五年中四回大阪市立大学附属病院へ通院している。<証拠略>

そして更に、原告キャクエの夫原告恒盛が多額の投資をして(六五〇万円)原告キャクエに喫茶店を開設させていたこと、その月収も昭和四三年度所得申告において七二万円となしておりながら、本訴に至り、同年分を一六五万円と税務署へ訂正申告をなしていること、右営業の経理事務は原告キャクエ本人尋問の結果によれば原告恒盛が一切なしているといい、原告恒盛本人尋問の結果によれば原告キャクエとその手伝の者がなしているといい、極めて不可解であること、(そのいずれかが虚偽の供述をなしていることは明らかである)、問診の際、医師へ説明する事項、就中、事故態様(岡野医師に対しては「追突」と虚言を弄しているものと思える)その直後の状況において誇張的であり、巽外科病院退院後、通常ひき続き同院へ通院して治療を受け続ける筈と思われるところ、殊更これを中止して、岡野外科へ転医している事由も明らかでないこと等を併せ考えると、その病状は客観的所見として自疾の動脈硬化症のほか特記すべき所見に乏しく自覚症状を主体とするもので、しかも賠償要求につながる神経症的傾向の強いものと認めざるを得ない。<証拠略>

三、損害

(原告キャクエ)

1、治療費 二四万四、五五〇円

治療行為の相当性については、これをくつがえすべき反証がないから、同原告主張のとおり認める。<証拠略>

2、得べかりし利益の損失 三六万円

前認定の同原告の職業、年収(七二万円)と症状の程度、治療経過から、事故後六カ月の休業損失の範囲において本件事故と相当因果関係のある損害と認め、これを越える分については自疾の動脈硬化症ならびに神経症的所産によるものとして採用しない。

3、慰藉料 六〇万円

前認定の原告キャクエの傷害の部位、程度、治療経過その他諸般の事情を総合して、本件事故による同原告の精神的苦痛を慰藉するには右金額が相当であると認める。

4、弁護士費用 一〇万円

弁論の全趣旨に徴し、原告キャクエが本訴提起をその訴訟代理人に委任し弁護士費用の支払義務を負担していることは明らかであるところ、本件事案の内容、審理の経過、後記認容額その他諸般の事情を総合し、そのうち右金額と本件事故と相当因果関係のある損害と認める。

(中村行雄)

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